家は、土地と人の
あいだに立ち上がる。
流行りの様式を当てはめるのではなく、その敷地とその家族にしか成立しない一棟を。深美建設が二十年変わらず守ってきた、家づくりの考え方です。
設計図は、
敷地に立った後に引く。
私たちの仕事は、机に向かう前に長靴を履くことから始まります。鎌倉という土地は、谷戸(やと)が入り組み、坂が多く、海風と山の湿気が同居する場所です。同じ「鎌倉市内」でも、稲村ヶ崎の潮を含んだ南風と、二階堂の杜に守られた静けさは、まったく別の設計を要求します。
だからこそ、初回のご相談をいただくと、私たちはまず半日ほど敷地に立ちます。朝の光がどの壁面に当たり、午後にどの庭木が影を伸ばすか。隣家の窓と視線がぶつからない高さはどこか。雨水はどう流れるか。図面より先に、その土地の癖を体で覚えるのです。
設計とは、ゼロから美しい形を発明する行為ではありません。すでにその土地が持っている条件を読み解き、暮らしと結び直す編集の仕事だと考えています。
注文住宅で最も難しいのは、足し算ではなく引き算です。雑誌で見た素敵な要素を全部入れた家は、たいてい落ち着きません。私たちは打ち合わせで、しばしば「それは本当に要りますか」とお尋ねします。
たとえば収納。多ければ多いほど良いように思えますが、本当に必要なのは「使う場所のそばに、使う分だけ」。玄関にコート掛け、キッチン裏に食品庫、洗面に下着とタオル。動線に沿って分散させることで、巨大なウォークインクローゼットより暮らしが軽くなります。
窓の数も同じです。明るさが欲しいからと窓を増やすと、家具を置く壁が消え、冷暖房も効きにくくなる。一枚の大きな窓で谷戸の緑を切り取るほうが、十の小窓より豊かなことがあります。
私たちが手放さない三つの基準
一、十年後にいっそう馴染むこと。二、住む人が掃除と手入れを続けられること。三、職人が誇りを持って仕上げられること。この三つを満たさない提案は、どれほど見栄えが良くても採用しません。
足すより、
削るほうが難しい。
プレミアムとは、高価な素材を並べることではありません。必要なものだけが、必要な場所に在る。その静けさを私たちは贅沢と呼びます。
時間が、味方になる素材を。
新品が一番きれいで、あとは劣化していくだけの素材は使いません。使うほどに色が深まり、傷さえ景色になる。そんな素材を選びます。
無垢の床材
主にオーク・栗・杉を使用。オイル仕上げで木の呼吸を止めません。傷は補修しながら、家族の歴史として刻みます。
漆喰・珪藻土の壁
調湿性に優れ、鎌倉特有の湿気を和らげます。左官職人の鏝(こて)跡が、量産品にない陰影を生みます。
黒皮鉄・現し躯体
手摺や framing には黒皮鉄を。隠さず見せるコンクリート躯体は、木の柔らかさを引き締めるアクセントになります。
「いい家とは、住んでいることを
忘れていられる家のことだ。」
— 深美建設 代表 / 一級建築士 深美 宗一